あるコミュニティで、運営メンバーの任期が交代するタイミングがあり、新しいメンバーとして引継ぎを受けたときのこと。
役割は、リーダー、議事録、配布物作成、会場の鍵の受け取りと返却などがあり、役割分担を相談することになった。
会場の鍵の受け取りと返却は、鍵を受け取り会合前に会場を開錠し、会合後に施錠して次の日に鍵を返却するのが仕事だ。
ただし、鍵の受け取りと返却は施設の営業時間内に行く必要がある。
会合が行われるのは夜だが、鍵の受け取りと返却のために、平日の昼間に動く必要があるのだ。
つまり、会合がある日とその次の日、2日連続で仕事の都合を調整しなければいけない。
他の役割であれば、仕事の後や休日などに時間をつくって対応できる。
私は、そういう理由で、会場の鍵の受け取りと返却以外の役割を希望した。
私と同じ理由で、会場の鍵の受け取りと返却以外の役割を希望する人は多かった。
そんな中、Aさんが「会場の鍵の受け取りと返却を担当したいです」と言った。
自分は専業主婦なので、時間の融通が利くからと。
私は「助かる〜」と思ったし、みんなも私と同じ気持ちだったと思う。
すんなりと役割分担が決まった。
……ここまでは順調だった。
突然の提案
ところが役割が決まった後、Aさんが突然こう言い出した。
もしかしたら、私や家族が病気になったりなどで、どうしても対応できないことがあるかもしれない。
だから、会場の鍵の受け取りと返却は、最初はみんなが順番にやることにしましょう。
ひととおりみんながやり終わってからは、私が担当します。
ある人がやさしく言ってくれた。
もしAさんが対応できない時は、誰かが代わりに対応するので大丈夫ですよ。
これで話は終わると思った。
ところが——
どうしても譲らない
Aさんは強い口調で言った。
実際にやってみないとわからないこともあるはずです。
だから、鍵の受け取りと返却は、一度はみんなが経験しておかないといけないんです。
お互いに助け合えばなんとかなる、手順はみんな把握しているから大丈夫、とみんなで場をおさめようとした。
しかし、何を言ってもAさんは譲らない。
みんな思っていたと思う。
それだと役割分担をした意味がないと。
全員が一通り鍵の受け取りと返却をやったら、予定している会合の半分以上をAさん以外が担当することになるからだ。
ある人がそれを指摘した。
すると、Aさんは怒りだしてしまった。
私が対応できない時に、困るのはみなさんですよ?
みなさんが困らないように、全員が一度は経験しておくべきだと言っているのに、どうしてわからないんですか?
結局、みんなが折れた
その場にいた全員が、「それはちょっと違うんじゃないかな」と思っていたと思う。
けれど、議論を続けても空気が悪くなるだけだし時間がもったいないとみんな思ったのだろう。
自然と場を収める方向に舵を切る流れになった。
最終的にまとまったのは、「最初の1回だけ、複数人で鍵の受け取りと返却をする」という案だった。
Aさんの主張を全面的に受け入れてしまうと、Aさんだけが当初の役割の半分以上を免除される形になってしまう。
それはどう考えても公平ではない。
だから、「最初の1回だけ、複数人でやる」というのが、現実的な落としどころになった。
2日間の仕事の調整が必要だが、何名かが手を挙げてくれて、最初の1回は複数人で対応することになった。
さすがに全員で対応することは難しかったが、不満そうな顔をしながらも、なんとかAさんにも納得してもらえた。
教訓
この件について、その後、誰も話題にしなかった。
そして、そのまま何事もなく任期が終わっていった。
でも、この出来事は、私の心にずっと残っている。
どうするのが正解だったのだろう?
いまだにふと考えてしまうことがある。
実際、Aさんの主張には無理があったし、公平性という観点も欠けていたと思う。
でも、Aさんを責めるのは違う。
Aさんなりに、何か理由があっての主張だったのだろうと思うからだ。
だからと言って、無条件にAさんの提案に乗って、まわりが犠牲になるのも違うとも思う。
Aさんが怒った理由は、今でもよくわからない。
もっと話し合えば理解し合えたのだろうか。
けれど、話し合うことで余計に傷ついたり、関係が悪化した可能性だってある。
話し合わない選択も、ひとつの防御だったのかもしれない。
まとめ
人間関係は、本当に難しい。
同じ出来事でも、人によって見え方が違うことがある。
その違いが衝突につながることがあることは、ある意味あたりまえだと思う。
その衝突をどう扱うかは、簡単ではない。
相手に完全に合わせれば、自分がすり減るかもしれない。
自分の意見を押し出すと、相手をすり減らしてしまうかもしれない。
だからこそ、「どこまで寄り添い、どこで線を引くのか」 その判断が、常に求められているのだと思う。
相手の立場も、自分の立場も、どちらも大事にしながら、ちょうどいい距離を探せる自分でいたいと思う。
ただ、それは簡単なことではなさそうだ。

